作品名 | 邪神の弁当屋さん |
---|---|
作者 | イシコ |
ジャンル | ほのぼの×ダークファンタジー |
巻数 | 既刊2巻(連載中) |
レイニーは一日一善をモットーにする弁当屋であり、実は謹慎中の『神』。
かつて邪神と呼ばれた彼女が生きる理由は今のところ‥‥『明日の弁当のおかずを考える事』である。
— 引用元:公式あらすじより(一部抜粋)
当ブログによる評価:お気に入り度★4.5、おすすめ度★3.5
本作を嫌いになる人は少ないと思いますが、「何も起こらなくて退屈」と感じる方はいるかもしれません。
私はかなり好きな雰囲気!1話を試し読みした時点で単行本を買い、Kindleでシリーズをフォローしました。

決して派手ではないのになぜか記憶に残る、不思議な魅力があるんだよね。
年代別おすすめ度
- バトル要素や刺激の強い展開がない、癒し系ファンタジー漫画を読みたい
- フラットでさらりとした絵柄が好き
- 漫画らしい表現は控えめな、動きの少ないモノクロイラストで和みたい
独特のゆったりした空気が流れる、ロー・ファンタジー漫画です。
主人公が「元は神様」という特殊な立ち位置、魔物も現れる世界観ではありますが…
- 個人でお弁当屋を経営していたり
- 卵焼きやおにぎり(2巻)が出てきたり
- 小さなコミュニティで過ごしていたり
と、現代の日本人にとっては至極身近な舞台。
あまりフィクションに触れてこなかった人よりも、色々な作品を見聞きして、一味変わった漫画を求めている方におすすめです。
『邪神の弁当屋さん』1巻 感想レビュー(ネタバレ度:中)
主人公は、死と実りを司る神・ソランジュ。
「北の国」にて古くから信仰されてきました。
…が、長い髪で顔が隠れる不気味な外見のせいで、他国からは「邪神」と恐れられています。
30年前、ソランジュが原因で北の国と南の国の間で戦争が起こりました。
ソランジュは上司である創造主から責任を問われ、無期限の謹慎処分として、人間の姿で「レイニー」と名乗って生きていくことになりました。
まだ読んでいない方はご注意ください
一日一善をモットーとする弁当屋
ソランジュ改めレイニー。彼女の一日は、丁寧に作ったお弁当をワゴンに詰め、相棒のチュンちゃん(ニワトリ型の魔物)と共に売りに行くところから始まります。
ある日、王城勤務の男性・ライラックが、商売を始めたばかりであるレイニーの弁当屋を訪れました。
許可証をあらため、弁当を買って帰った彼は、レイニーの作った卵焼きを気に入り、翌日も足を運びます。
- 常連として顔見知りになったライラック
- ライラックの弟で、実は○○であるナタリオ
- 本人も知らない秘密を抱える、レイニーの同居人ダリア
レイニーを取り巻く人たちは、穏やかに流れる時間の中で、それぞれの運命と向き合っていきます。
魔物で、神で、今は人
特徴的な絵柄に意識を持っていかれますが、キャラクターの造形にもぜひ注目してもらいたい!外見も内面も、噛み締めたくなる味わいがあります。
群を抜いているのは、やはり主人公のレイニー。口だけが弧を描く、無表情に近い微笑がほとんど崩れません。
人間を愚かと評する一方、面白いとも可愛いとも言う。
刺々しさのない小柄なルックスとは裏腹に、人外ならではの残酷さが見え隠れします。
本当に愛がわからないのか
2000年前、レイニーがまだ「ソランジュ」ですらなかった時代。
あの過去はなかなかえっぐいですね!!切ないを通り越してしんどい。弁当屋を始める前の彼女が、生きる理由を見つけられなかったのも道理…。
人間から距離を置いているように見えるソランジュですが、2話で明かされた二律背反こそが真実なのでしょう。
とにかくレイニーが好きだ
元々、私は「神」って存在に弱いんですよ〜!!
人ではない高位の存在が、人に対して執着したり、逆に無関心だったり…向ける感情のすべてに心惹かれるんです。
明らかに人とは異なる感性や能力を持つレイニーの一挙一動が愛おしくて、ただ彼女の生活を眺めているだけでも楽しい。
このまま平穏な弁当屋ライフが続いてくれても一向に構いませんが、レイニーの立場上そうはなりませんよね…。



ほっぺをむにっとつつかれた時のソランジュも可愛すぎ。
好きなシーンTOP3
- 3話のラストで微笑むライラック
- ナタリオの頭をなでるレイニー
- レイニーについた葉っぱを取るライラック
レイニーが登場する時点でもれなく名シーンなので、なるべく他のキャラも関わるエピソードを選びました。その割に全部レイニー絡みなのはご愛嬌!
1. 3話のラストで微笑むライラック
いかつい外見してるので、登場時はもっと堅い性格なのかと思ってました。
ところがどっこい、気さくで素直で頼りになるお兄ちゃんです。好き。
レイニーやダリアに比べると、とても表情が豊か。困ったように笑う顔が最高ですね〜!
1話の時点で「卵焼きの希少部位って何!」とツッコむほどに仲良くなったレイニーとライラック。
ライラックがレイニーに向ける気持ちは、友情でも恋愛でもなく親愛でしょうか?嬉しそうに弁当を受け取る様子に、心が温まりました!
2. ナタリオの頭をなでるレイニー
特殊な体質を打ち明け、心乱れる成人男性を「可愛い子供」と言い切るレイニーの器の大きさ!さすがは推定2000歳。
実直なライラックからは想像し得ない、知性的で茶目っ気のあるナタリオの性格も意外でしたね。
これは確かに、弟が王位を継いだ方がいい…。為政者には適度なズルさも必要かなと。
3. レイニーについた葉っぱを取るライラック
か わ い い
な…なんですか?この破壊力は?
こんな癒し系キャラが、邪神呼ばわりされたんですか!?
「触るぞ」と断りは入れつつも、年下か小動物のように世話を焼くライラックにも和みます〜。お兄ちゃんとしての習慣が、骨の髄まで染み込んでいるんでしょうね。
まとめ:温もりと切なさが同居する、ミステリアスなほのぼの系ファンタジー
レイニー可愛い!!とだけ叫んでいたいけど、彼女の抱える背景が重すぎて…。
1巻では本作の闇は、まだちらりとしか見えません。今後そういった側面が増えていくのは、楽しみでもあり怖くもあります。
愛と罪の間、人と神の間で、レイニーは(とりあえず)生きます。
— 引用元:『邪神の弁当屋さん』1巻 次巻予告より
何にせよ、レイニーや周囲の人たちには幸せになってもらいたい。ハラハラしながら続刊を待ちわびています!



ソランジュの悲しい願いが、どうか叶いませんように…。