作品名 | 邪神の弁当屋さん |
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作者 | イシコ |
ジャンル | ほのぼの×ダークファンタジー |
巻数 | 既刊2巻(連載中) |
彼女の名前はレイニー。昔はソランジュという名前の邪神だったが、今はお弁当屋を営む人間だ。
どこか隙間がある者たちと共にレイニーは生きる。彼女の目的が叶う時まで。
— 引用元:公式あらすじより(一部抜粋)
当ブログによる評価:お気に入り度★4.5、おすすめ度★3.5
1巻と同じく、やや通好みな印象のある作品です。
本作のモチーフになぞらえるなら、唐揚げや鮭メインではなく、ごぼうのしぐれ煮が主役の渋めのお弁当。
肉や魚は入らなくとも滋味深く、食後には心地よい満足感が残ります。

ちなみに私の最愛は海苔弁!おかかも昆布も、お弁当になるとどうしてあんなに美味しいんだろう。
年代別おすすめ度
※1巻レビュー記事より一部再掲
- 料理を通して心を通わせる、優しいファンタジーを読みたい
- すっきりした可愛い絵柄で、淡々と描かれるシリアス展開が好き
- 同作者の読みきり作品『商人とタマゴ』に興味がある
『邪神の弁当屋さん』第2巻では、レイニーの過去と目的がついに明かされます。
病の神が立ちはだかり、力を失ったレイニー(ソランジュ)に訪れる危機。
1巻の穏やかな日常から一歩踏み込み、人間関係の広がりと闇の深まりが描かれました。
しかし良い意味で大げさでないタッチと、随所に挟まれるとぼけた発言や緩やかな掛け合いが空気を和らげます。
レイニーの人間味や、感情の起伏はむしろ増えました。1巻の優しい雰囲気が好きだった方も安心して楽しめる、和やかさの中に緊張感を加えた巻です!
『邪神の弁当屋さん』2巻 感想レビュー(ネタバレ度:中)
前巻ではキャラクター紹介も兼ねて、1人ずつにスポットを当てられていました。
今巻はレイニーを介してライラックとダリアが対話したり、1話で出会った少年と再会したり。
限られた社会で暮らすレイニーの人間関係が、少しずつ広がり深くなっていきます。
まだ読んでいない方はご注意ください
レイニーズキッチンへようこそ
いつの間にか、食材の荷物運びが常習化したライラック(一国の大臣に何させとんねん)
レイニーに誘われ、家に上がって休憩することにします。
「女性の家に」って遠慮の仕方とか、チュンちゃんと梅ジュースに後押しされる経緯とか、ことごとく私のツボをついてきますね…。好き。
ダリアとライラックの再会
来客があることを知らされ、祖母とレイニー以外の人が苦手な同居人・ダリアは大慌て。
戸棚に隠れて威嚇しますが、ライラックが以前酒場で世話になった客だと気付き、驚きのあまり姿を現しました。



条件を満たすと出てくる、レアなモンスターみたいだな。
みんなで臨む台所仕事
正直レイニーとライラック、レイニーとダリアの組み合わせが好き過ぎて「3人そろうと軽快さが失われるのでは?」という懸念がありました。
- すぐさま海苔を買いに行くライラックのフットワーク(しかも高いやつ)
- 止めるどころか味噌を追加注文するレイニーの図々しさ(かわいい)
- 戸惑いながらもおにぎり作りを指南するダリア(がんばれ)
それがどうでしょう、三者三様のふるまいが何とも相対的に際立つ!
人数が増えたことで各々の特徴が強調され、キャラクターの輪郭がより鮮明になりました。全員推せるアイドルグループや…。
ダリアの祖母・リサの思い出
たびたび片鱗の見えていた、レイニーとダリアが知り合った当初。
ダリアの祖母であるリサを交えて、3人で生活していた頃の全貌が明かされます。
旅人から家族の一員へ
少女時代のダリアと、今とまったく変わらない姿のレイニー。
ふらりと現れたレイニーを、ダリアと祖母のリサは受け入れ、一つ屋根の下で暮らし始めます。
- 旅人を名乗るくせに荷物を持たない
- 腹が空かないからと食事を摂りたがらない
- そもそも名前すらダリアのつけた通り名
怪しさ満点の彼女をリサが受け入れたのは、ひとえにダリアのためでした。
リサ以外には怯えるダリアが、レイニーには懐いている。
人形のようなレイニーが、ダリアを見つめるまなざしは温かい。
リサから料理やお弁当作りを教わり、ダリアの未来を託されたレイニー。
決意をこめて北の国へと旅立ち、現在へと至ります。



レイニーが着ている服の柄は、リサの想いを受け取った証だった…!
多くを語らない、余白の美
本作のテーマの一つに掲げられる「隙間」。
レイニーはお弁当を詰める際、隙間を埋めることを強く意識しています。
一方、『邪神の弁当屋さん』自体はかなり想像の余地を残した作風。
- 「魔物が嫌い」と告白されたレイニーの横顔
- レイニーやダリアの言葉を受け、ライラックの2コマにわたる表情の変化
- レイニーにお願いをした、路地裏の少年の真意
ライラックに謝罪する後ろ姿や、己の無力さに打ちひしがれる場面。
あえて描かれなかったレイニーの表情が、なおさら心を揺さぶります。
核とも言える部分をあえて読者に委ねる。描き過ぎないバランス感覚に、控えめな美しさを感じました。
読みきり短編『商人とタマゴ』
単行本に別作品が収録されているのは、歓迎しない派なのですが(本編をたくさん入れてほしい)
『邪神の弁当屋さん』で初めてイシコ作品に触れた私にとって、『商人とタマゴ』は共通点を探すのが楽しい読みきり短編でした。
癒し系邪神のレイニーがいなくても、こんなに面白い漫画が描ける方なんですね~!ますますファンになってしまう。
小柄なキャラクターが好き?
本作のヒロインである名無しのお嬢ちゃんも、小さく無邪気で意志の強いキャラクターです。かわいい。
エキゾチックな褐色肌も素敵ですし、商人さんの顔の秘密を聞いた時の反応もとても愛らしかった…!
よほど予想外だったんでしょうか。商人さんのセリフにおける「…」の数が動揺を物語っていますね。
ストーリーは意外な真相へ
最初はお荷物扱いして渋っていた商人さんが、素直なお嬢ちゃんにほだされていくさまは、どちらも可愛くて!
「これからさらに仲良くなっていくんだろうな」と微笑ましく思っていました。
大人になったら…と、たくさんの夢を抱いていたお嬢ちゃん。
「顔がない」ことを笑い話のように語っていた商人さん。
2人の出会いと結末は、それぞれにとってどんな影響をもたらしたんでしょう。
短くとも胸に染み入り、的確に心をえぐってもくる、優しく切ないお話でした。



温かい光と深い闇をミックスさせた話を描くのが得意なんだね…。
まとめ:レイニーが力を求める理由が明かされ、物語はさらなる深淵へと向かう
レイニーの目的ってそれ~~~~!!?
1巻の感想で、私が願った「幸せになってもらいたい」が早くもぶち壊されましたよ!


そりゃ、幸せの定義は人によりますし。
ソランジュとしては、目的を達することが幸せなのかもしれませんが…。
まだ成功したものを食べてもらってなかっただろう
お前のために作ったんだ レイニー
— 引用元:『邪神の弁当屋さん』2巻より
ライラックやダリアと接している時の、わずかな態度の軟化を見ると、レイニーにとって「満足のいく結果になるか?」と心配になりますね。
次巻予告は、病の神とのやりとりが冗談だったかのような軽いノリですが、はたして闇成分はどの程度の割合か。
ほのぼのもシリアスも上手に描かれる作家さんなので、どんな配分でも面白くなるはず。発売予定の11月が待ち遠しいです!



仮装や掃除で大はりきりするライラックの笑顔があどけなすぎるのよ。